つなぎオイスターバル訪問記1

冬季の観光振興策のひとつとして全国各地で冬期限定の 「(焼き)牡蠣小屋」 がオープンしていますが,その多くは「海辺にビニールハウスの仮設小屋」といった風情で牡蠣の味覚にオールインしているように思われます。 それはそれで良いと思う一方,ちょっと殺風景すぎるんじゃないかという心の声も漏れ聞こえてきます。

そんな声を聞いてか聞かずか,熊本県南部は葦北郡津奈木町,不知火海(しらぬいかい)沿い漁村の 「高台」 に閉校した小学校の廃校舎を利用した 「つなぎオイスターバル」 が2019年から毎冬1月~3月の土日祝祭日限定でオープンしています。 昨今の津波騒動もあって海辺というロケーションを手放しでは喜べなくなっている私達ですが,高台の立地であれば 「安心」 とともに 「眺望」 という新たなセールスポイントも追加され訪問するモチベーションも高まろうというもの!

という訳で通算4シーズン目を迎える今年オープン初日 2022/01/08(土),鉄道最寄り駅となる肥薩おれんじ鉄道津奈木駅から 「つなぎオイスターバル」 のある津奈木町平国地区までの峠道9.5kmを自転車で走ってきました。 今年の走り初めとなります。

車に自転車を積み込み,八代の3駅南となる 「肥後二見(ひごふたみ)」 駅を一路目指します。 自宅最寄りの植木駅から鉄道を利用してもよいのですが,太陽が低いうちは寒くて走りたくないのと,肥後二見駅は駅前の空地に車を無料で留め置けるのでそうする次第。 さらに列車の中からはオイスターバルの電話予約をするのが憚られるという事情もあります。この日が今シーズン営業初日なので営業開始時刻 10h00AM にならないと電話が通じず,八代駅からの乗車だと乗車予定列車の出発が 09h57 とオイスターバル営業開始時刻よりも早いので車内から電話予約を入れることになってしまうのですが, この列車が3駅先の 「肥後二見」 を発車するのは 10h14。 これなら電話予約を入れた後に乗車できるので安心です!
それでは行程をご紹介。
自宅 08h30 ~(車)~肥薩おれんじ鉄道 「肥後二見」 駅前 09h30 (自転車収納要10分)
「肥後二見」 駅 (平面移動) 10h14 = = (列車輪行 770円) = = 「津奈木」 駅 10h49 (跨線橋昇降要5分)
「津奈木」 駅前 (自転車組立要10分) 11h00 ~(自転車 : 9.5km)~ 「つなぎオイスターバル(芦北町平国)」 11h45
 焼き牡蠣とちりめんじゃこ炊き込みご飯で昼食,燻製牡蠣のアヒージョを土産に購入
「つなぎオイスターバル」 13h30 ~(自転車 : 11.5km) ~ 「佐敷」 駅前 14h20 (自転車組立要10分)
「佐敷」 駅 (平面移動) 15h19 = = (列車輪行 510円) = = 「肥後二見」 駅 15h42 (平面移動)
「肥後二見」 駅前 (自転車積込要10分) ~(車)~ 自宅 17h30
自転車走行距離 : 21.0km
肥後二見駅九州新幹線の全線開業により,平行在来線区間となる鹿児島本線の八代と薩摩川内の間がJRから分離され第3セクターの肥薩おれんじ鉄道に移管されました。それまで毎時特急1本+各停1本だった列車ダイヤは各停1本だけに半減,沿線人口を考えるとこれでも精一杯の運行頻度と思われますが一気に黄昏れた感は否めません。 唯一改善されたのは列車本数半減により上下両方向の列車ともほぼ全ての時間帯で改札口に近いホームに入線できるようになり(駅で列車離合が減った),跨線橋を昇り降りする必要がなくなったことでしょうか。重くて嵩張る自転車を抱えての鉄道輪行はもとより,お年寄りにも優しいサービスといえます。
貨物列車のために架線は温存また通勤通学利用客で混雑する朝夕を除いた昼間の時間帯に平日・週末・祝祭日を問わず自転車を折り畳まずそのまま乗車できる 「サイクルトレイン」 というサービスが2021年2月から始まりました。1両だけで運行される列車が殆どなので団体での利用は難しいと思われますが,あの手この手で利用客を一人でも増やしたいという同鉄道の厳しい懐事情を斟酌してこれからは機会を見つけて同鉄道を積極的に利用したいと思います。

オイスターバルの予約電話をしようとしていたらガタンゴトンと列車が近付いてきます。乗車予定列車の到着にはまだ時間があるはずと訝っているとコンテナ貨物列車がやってきました。

そうそう肥薩おれんじ鉄道の列車は全てディーゼルカーなのですが,元はと言えば同鉄道は旧鹿児島本線で貨物列車が相応の本数走っていたところ。貨物列車は電気機関車が牽引するのでそのために交流電化の架線を温存し,貨物列車が通る時間帯だけ通電し,それ以外の時間帯には電気を止めて電気代を節約しているのでした。旅客列車も本数が少ないのだから電車のままでよかったのにとも思うのですが,そのあたりは何か大人の事情があるのでしょう。
津奈木駅10h14 定刻に入線した列車に乗り込みます。 バスと同様整理券を取り,輪行袋に折畳み収納した自転車を指定保管場所に置いて念のため持参のバンドで固定。この列車はさきにふれたサイクルトレインに該当するので組み立てたままの状態で乗車しても構わなかったのですが,降車予定の津奈木駅は乗降ホームが例外的に全列車で方向別に分かれ下り列車では跨線橋の昇降を強いられるため持ち歩きし易いように予め折り畳んでから乗り込んだ次第です。

乗車した肥後二見から次の上田浦にかけての区間は不知火海に沿って走る数少ない場所で右手に美しい風景が広がります。

上田浦,たのうら御立岬公園,肥後田浦,海浦,佐敷,湯浦と順調に進み 28.7km 先の津奈木には 10h49 定刻に到着。 運賃 770円を整理券と共に運転席横の運賃箱に入れて降車。 跨線橋を渡り駅待合室から外に出ます。

駅前で自転車を組み立て 11h00 丁度にライドを開始! 気温は既に 14℃,風もほぼ無風で絶好の自転車操業…じゃなかった自転車走行日和です!
これから県道56号線で峠を越えて 「つなぎオイスターバル」 のある津奈木町平国地区まで 9.5km,40分で走りきれるかな? 走行ルートはこちら (↓)。
↑ 津奈木駅前~つなぎオイスターバルの走行ルートが上手く表示されない時はここをクリック               
そして走行動画はこちら,等速なので起伏に富んだコース (に手を焼く) の様子がよ~く判ります (33'52")。 
↑ 津奈木駅前~つなぎオイスターバルの走行動画がきちんと再生されない時はこちら!
素晴らしいオーシャンビューの旧・平国小学校校舎を利用した「つなぎオイスターバル」最後の坂道を駆け上がると,そこは平成28(2016)年3月末に統合・閉校となった平国小学校の校舎です。 標高45mの高台に建つ校舎からは眼下に平国漁港,そして不知火海の向こうには御所浦島(左),天草上島の龍ヶ岳町(右)がよく見えます。御所浦島までの直線距離は10kmしかありません!

映画 『眺めのいい部屋(1987)』 ではプッチーニの「ラ・ボエーム」が流れていましたが,此処つなぎオイスターバルではシャーデーの 「キス・オブ・ライフ(1992)」 が流れておりました。 もう少し新しい音楽でもいいと思うのですが,選曲された方の思い入れか,あるいは訪問客の想定が比較的高齢なのか。(笑)
4人卓✕8田舎なので冬期の土日祝祭日限定営業となっていますが,通年で活用できるアイデアはないものか? 素晴らしい眺望と美味しい海の幸。ぜひ活用していただきたいと思います。

オイスターバルの客席は校舎の玄関だった場所を仕立て直したオープンエア空間で,ドラム缶を舟形に切った炭焼き炉を囲むように中央をくり抜いたベニヤ板のテーブルが設えられており,4~6人の着席が想定されています。
これが8卓。

地元男女高校生の慣れない接客が初々しい!
千々石駅,愛野村から温泉軽便鉄道が千々石まで開通した4年後(1927),千々石~肥前小濱が開通メニューは 「焼き牡蠣(殻付)」,「燻製牡蠣アヒージョ(剥き身)」,「脚赤海老」,「緋扇貝」,「ちりめんじゃこ炊き込みご飯」,等々。

飲み物は地元津奈木町 「亀萬酒造」 の清酒をはじめ麦酒,ワイン,ノンアルコール飲料など。 ただし車での来場となるのでアルコールの出足は低調か。 売上貢献度の高いアルコールが出ないのは営業的に痛いかも。

燻製剥き身牡蠣アヒージョの瓶詰めは土産にお薦めです!
冬の夜,人通りの絶えた小浜のメインストリート,細い三日月が静かに街を照らしますさて腹も朽ちて 13h30 にオイスターバルを後にしました。 目指すは 11.5km 先の佐敷駅。 津奈木駅前からの往路が起伏に富んだコースだったので,佐敷駅前までの復路は海沿いの平坦路をのんびり走ることにします。

こうして 14h30 に佐敷駅前に無事到着したのですが,ここで問題発覚! 復路の走行動画を撮影したはずなのですが,うっかりしてメモリーカードの残量が殆ど無いことを失念していたためなんと録画されていなかったのでした。
そして翌々日の 1/10(月),復路の走行動画を撮影するためにオイスターバルを再訪することに!あ~あ,やっちまったな。
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