玉名市横島干拓・長洲町・荒尾干潟 海岸線自転車散歩 |
|
2021/10/18(月) 熊本県北部:玉名市横島干拓・長洲町・荒尾干潟の海岸線を辿って自転車で走りました。 |
|
熊本には江戸時代から昭和にかけて遠浅の有明海と不知火海に築かれた大規模な干拓地,北から横島干拓地 (今回走ったところ),熊本干拓地 (10/08 に走ったところ),不知火干拓地があります。遠浅に加えて干満水位差が6mに及ぶことから (有明海) 満潮時の海岸線から沖合へ十数kmに亘って干潟が広がり,そのことが干拓事業の動機となったことは間違いありません。
現在の海岸線は (干拓地の潮受け堤防) 江戸時代初期の海岸線から 5km 以上も沖に位置しています。 内陸部から干拓地海岸方面に向かって走ると途中で何度か土塁や石垣の壁を通り抜けますが,これらの壁はそれぞれの時代の潮受け堤防であり,拡張を重ねてきた干拓の歴史を物語る貴重な資料と言えます。
自宅で走行記録を整理していたら,走行ルートの海抜が干拓地内ではマイナスとなっており,確かに干拓地の地面がかつての海底であったことを示していました。 |
|
|
↑玉名市横島干拓,長洲町,荒尾干潟 海岸線自転車散歩 (45km) 走行ルートが上手く表示されない時はここをクリック |
|
10/08(金) 熊本干拓地ライドで (23km) お気楽な平坦路走行に味をしめ,今回はちょっと長めの 43km。 朝起きた時には肌寒かった天気も日が高くなるにつれて気温が上がり,最寄りの JR 鹿児島本線 「植木駅」 から3駅輪行し 「肥後伊倉」 で下りる (280円) 頃には程よい自転車操業日和となりました。 自転車を組み立てて 9h30AM スタート!
この肥後伊倉駅は朝夕の通勤通学利用客がほぼ100%のため,昼間の時間帯に降り立つ私のようなアヤシイ客は怪訝な目で見られる…ということもなく (笑),鼻歌まじりで緩い下り坂を干拓地に向けてペダルを漕いで行きました。
肥後伊倉駅は南側の金峰山・二ノ岳・三ノ岳山塊から北に伸びる尾根の中腹に位置しており (海抜 36m) 南西方の横島干拓地に向けては 2km 程のなだらかな下り坂となっています。
眼前に眺望が開けるほどの高度ではありませんが旅のプロローグとしては悪くありません。
自転車旅,特に鉄道やバスでの輪行を伴う旅行の場合は混雑する朝夕の通勤時間帯を避けることをお薦めします。 大きな荷物を抱えて通行の妨げとなったり車内で邪魔になったりと敵視されかねません。
通勤利用者の立場では 「自分が働いている時に縮緬問屋のご隠居は諸国漫遊の旅とはなんとも結構なご身分だこと」 と面白くないでしょうし。 |
|
 |
|
|
 |
肥後伊倉駅から 1km ほど走ると伊倉南八幡宮を通過します。 今日は先を急ぐので自転車の上から遙拝して失礼。
通勤時間帯を避けて旅をするもう一つのメリットとしてマイカー通勤の車列と出会わずに済むことが挙げられます。 先を急ぐドライバーもノロノロ走る自転車は迷惑でしょう。
それにしても地震大国の日本で鳥居のように不安定な建築物がいまだにカタチを変えずに残っているのはなんともに不思議です。 でも安芸宮島の 厳島神社の大鳥居は地震が来てもびくともしなさそう。(笑)
このページの背景画像は玉名市の公式ゆるキャラ 「たまにゃん」 です。 「たまな」 だから 「たまにゃん」? ちょっと安易過ぎない?
横島干拓地という名前の由来となった 「横島」 ですが,現在は干拓地の真っ只中にある小高い丘ですが (海抜 46m),ここはかつて 「島」 であったことが予想される地名ですね。
標高が高く地盤もしっかりしていることから玉名市の広域避難所の一つに指定されています。
地盤の安定性という観点からは 「埋立地」 より優位と思われる 「干拓地」 ですが,それでも 陸地で地盤のしっかりした平地に比べると劣っていることが防災マップから読み取れます。 |
|
|
|
干拓地の作物といえば昔は 「米」 の一択でしたが,時代も変わり現在では稲作5割,残りはナス・イチゴ・花卉等付加価値の高い園芸作物が勢いを増しています。 稲刈りもこれからが本番という状況でした。 背後に見えるのは有明海対岸の雲仙。
ここはその昔,海底だったんだよなあ,うんうん。 広大で平らな土地を得たお百姓さんたちのワクワクは如何ばかりののものだったのでしょうね? |
|
 |
|
|
 |
最初にも触れましたが干拓地は何度も拡張を重ねながら沖合に向かって伸びており,干拓地内を岸から沖合方向に向かう道路はそれぞれの時代の干拓潮受け堤防を進撃の巨人よろしく通過します。
左の画像は大正から昭和初期に作られた潮受け堤防の外側で,石垣造りとなっています。 干拓地が沖合に向かって伸びるほど潮受け堤防は高さを増していきます。 |
|
|
|
こちらは現在の潮受け堤防の外側で,波消しブロックが緩やかな角度で幅広く敷き詰められています。
上に紹介した大正~昭和の石垣堤防に比べると堤防外側の設置角度が緩やかな点が大きな違いで,こちらの方が堤防への波のダメージが少ないそうです。 つまり波を受ける堤防表面の面積が増えるので力が分散されるのだとか。
これに加えて一定間隔で沖合に向かって石積み突起が設けられ,海流による砂礫堆積を促進しているそうです。 砂嘴・砂州の生成を促し,これも堤防への波のダメージを減らしているそうです。
頭イイ! |
|
 |
|
|
 |
菊池川河口の北側は岱明干拓地で潮受け堤防の外側に干潟に白い砂を敷いた 「鍋松原海水浴場」 が整備されています。
有明海は遠浅で海水浴場もたくさんあるのですが,どこも砂が黒く砂浜というよりも干潟の体が強いので,このような白い砂浜の方が人気が高いのです。
奥に見える門形クレーンは造船所 (Japan Marine United) のそれ。 遠浅の海なのに…
有明海というのは知れば知るほど不思議な海です。 遠浅で海苔の養殖もやっているし,巨大船も作っている。 海水浴場もあれば,ラムサール条約保護干潟もある。 |
|
|
|
大型船を作る造船所の立地としては遠浅の海岸は本来不向きです。
ここ長洲町は造船所敷地に隣接して有明海対岸島原半島の多比良とを結ぶフェリー港があり航路確保のため定期的に浚渫して水深を確保しているから造船所を誘致したのかな?
外洋に面していると波浪が邪魔なのか造船所は瀬戸内海をはじめ波の穏やかな内海の立地が多いですね。 |
|
 |
|
|
 |
有明海のように遠浅の海では各地で沖に向かって電柱が列を成して伸びている光景をみることができます。
今回ご紹介するのは鍋松原海水浴場のすぐ南にある 「岱明海床路 (たいめい・かいしょうろ)」 です。 満潮時には道は隠れて電柱の列だけが沖に向かって伸びているので謎の光景かもしれませんが,干潮時に現れる道路がその正体で,電柱は道路末端で作業する巻上機や各種電動工具のために必要なのです。
なにしろ遠浅なので干潮時には海苔御簾(みす)の手入れにしろ魚の水揚げにしろ軽トラで海床路を沖まで走らせないと仕事にならないのです。
なおこれら海床路は漁師さん専用です! 一般人が興味半分で車を乗り入れても作業の邪魔になるだけですから乗り入れは厳に慎みましょう。 美味しい海苔が食べられなくなったら困ります。 |
|
|
|
長洲港前から国道389号線を北に600mほど走ると左前方に分岐する生活道路があり,そこから約1kmで美しい松林の中を通り抜けます。 「蔵満海岸松並木」
です。 車の往来も希で散歩・ジョギング・サイクリングに超おすすめです!
九州だと佐賀県唐津市東部 「生(いき)の松原」,若狭湾西部宮津の 「天橋立」,静岡の 「三保の松原」,全国の海岸に松原があります。 ここ蔵満海岸のそれは小規模ではありますが,海風に幹をくねらせながら力強く茂る緑の松を見るとなぜか心が落ち着きます。
干拓地の潮受け堤防も建設後年月を経て内側・外側に松林が形成されてはじめて風景として落ち着くのかもしれません。 再開発で植樹されたお飾りの街路樹が年を経て林になると落ち着くのと同じように。 |
|
 |
|
|
 |
で,蔵満海岸松並木の海側に 「荒尾干潟(あらお・ひがた)」 が広がっています。 ラムサール条約で登録・保護された湿原です ( 日本国内では52ヶ所が登録
)。
この日の昼の干潮時刻は 13h45 で,左の写真は 13h44 に撮影,ほぼ Max の干潮光景です。 画面右手奥に見える塔は大牟田市の三池火力発電所の煙突。
水平線上左右に伸びる山は佐賀県背振山脈,有明海上は障害物がないので眺望がききます。
ここからほんの5km先に大牟田の一大工業地帯が広がっているとは…やはり海岸は人工海浜よりも自然な浜の方が落ち着きますね。 すぐ傍の 「荒尾干潟水鳥湿地センター」
は月曜休館。 |
|
|
|
蔵満海岸松並木と荒尾干潟 (動画撮影 : 2021/11/04, 7'38") |
↑動画がうまく再生されない場合はこのリンクをクリック! |
|
旅の終わりは南荒尾駅,ここも通勤・通学利用がほぼ100%。 今回の旅の出発地点肥後伊倉駅は民間委託で昼間は出札業務のため係員を配置した半有人駅ですが,ここ南荒尾駅は完全な無人駅,風情には欠けますが経営の厳しいJR九州の台所事情では仕方ありません。
私の乗る列車は入口から跨線橋を昇降することなく乗車できるホームから発着するので思い荷物を抱えていても楽ちんです。
到着する植木駅もその列車を降りて跨線橋の昇降なしで出口から外に出られます。今回の旅を逆ルートで南荒尾発~肥後伊倉着にするとすべての発着駅で重い荷物を抱えて跨線橋を昇降しなければいけなくなっていた!。 |
|
 |
|
|
実はこの南荒尾駅から帰りの列車に乗る前に遅めの昼食を摂るべく1.7km離れた広島風お好み焼きの名店 「パウロ」 に寄ってきました。 国道208号線に面した場所にある創業約半世紀!という老舗です。
肉玉モダン(焼そば入)650円也,ごちそうさまでした。 バラエティに富んだ海岸線三昧の旅,大満足…でも明日の筋肉痛がちょっと心配かも。 |
|
|
|
copyright 2021-2022 shoichiro toyama, all rights reserved. last modifued
2021/11/04. |
|