2021/11/16(火)午前,旧鹿本鉄道廃線跡の 「山本橋停車場跡」~「肥後豊田停車場跡」 を自転車で走りました(3.2km)。 | ||||||||||||
JR九州,鹿児島本線の 「植木」 駅から分岐して県北の 「山鹿」 に至る全長 20.3km の軽便鉄道がかつて走っていました。「鹿本鉄道(かもとてつどう)」 といいます。会社の設立は大正4(1915)年。後に 「山鹿温泉鉄道(やまがおんせんてつどう)」 と改称。 大正から昭和初期にかけての世界経済恐慌期に地元有志連がやっとの思いで設立した弱小私鉄の例に漏れず,この鹿本鉄道も災害に強いインフラを用意することができず大雨や台風のたびに運休を強いられ,昭和32(1957)年の集中豪雨では「植木」~「長浦」間の勾配築堤がズタズタに崩壊,莫大な復旧費用を調達する目処も立たず,国鉄連絡路を絶たれた会社は全線運休を余儀なくされ(昭和35=1960年),やがて全線廃止となりました(昭和40=1965年)。 私が植木に引っ越してきた翌年のことです。そういう訳で私は走っているこの鉄道の列車や線路を見たり乗ったりしたことがありません。 残っている資料も散逸し往時を偲ぶ縁(よすが)もほぼ皆無!どうすりゃいいのさ思案橋。(笑) 幸い廃線跡の用地が 「熊本県道330号自転車線,愛称:ゆうかファミリーロード」 の植木~山鹿区間にそっくりそのまま転用され,現在では立派なサイクリングロードに整備されました(平成4=1992年開通)。 これから何回かに分けてこの自転車道を実際に走り皆さんにご紹介したいと思います。 |
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第3回となる今回は「山本橋停車場」から1つ山鹿寄りの「肥後豊田橋停車場」までの区間。 論より証拠で地図をご覧下さい。 | ||||||||||||
↑鹿本鉄道「山本橋停車場」跡 → 「肥後豊田停車場」跡 (3.2km) の地図がうまく表示されない場合はこのリンクをクリック | ||||||||||||
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山本橋停車場跡にて ↑ | ||||||||||||
上の航空写真 (Google Map) をご覧頂くとよく分かると思いますが,山鹿から南のJR植木駅を目指す鹿本鉄道のルートは肥後豊田で国道3号線を東から西に横切り,人家(利用客数を見込める)の多い尾根筋を走る国道3号線と一緒に植木町中心市街地を通る道筋ではなく,その台地尾根筋西側に豊田川が刻む谷筋沿いのルートを選択し山本橋,長浦を通っています。 このルート選択の最大の問題は豊田から植木にかけて住民が鉄道を利用するには谷筋の駅が遠いということです! なぜ多くの利用客を見込める尾根筋のルートを取らなかったのか? おそらく既に人家が密集する地域に鉄道を通す用地買収を行うには資金が足りなかったのでしょう。 バスが道路を自前で用意することなく車両さえあれば営業できるのに対して,鉄道は車両だけでなく線路を一から用意する必要があるところが不利になります。 事実,昭和に入って山鹿と熊本を結ぶバス路線が国道3号線に走り始めると利用客は便利なバスに流れ,鹿本鉄道には閑古鳥が鳴くことになりました。 国道3号線が豊田から植木に向かって上る坂道は加茂坂と云いますが勾配は全長約3km,傾斜は上り1.8パーセント,鉄道が上れない急坂という訳ではありません。 やはり地価の高い尾根筋の住宅地に線路用地を確保する資金がなかったので,地価の安い谷筋の農地に線路を敷くしかなかったのでしょう。 旅客需要予測も甘かった。 前回走った長浦~山本橋間も沿線に人家は殆ど見掛けませんでしたが,今回走った山本橋~豊田間も今日なお多くの人家を見かけることはありません。 山鹿から植木まで全線を乗り通す旅客がいったいどれだけいるというのか? 経営ビジョン不在の鉄道は開業の時点で既に余命を宣告されていたといえます。 山本橋を出発してすぐ線路は熊本県道3号大牟田植木線を横切りますが,ここには遮断機と保安要員いわゆる踏切番が配置されていました。 遮断機+踏切番の配置された第一種踏切は鹿本鉄道全区間に4箇所あり,今回走る山本橋~肥後豊田間には県道3号を横切る 「山本橋踏切」 と国道3号を横切る 「豊田踏切」 がありました。 自転車道化された現在,踏切は撤去されましたが,山本橋踏切は平面交差に,豊田踏切は自転車道が地下通路で交差しています。 鉄道が走っていた頃にはなかった交差点としては,九州自動車道の下を潜るアンダーパス,植木農免道路 (通称すいかどうろ) との交差点があります。 また谷筋を刻む豊田川を渡る短い鉄橋はコンクリート道路橋に置き変わりました。 自転車で走っていてもこれといった見所が一つもない実に地味な沿線風景です。この日は私の他に誰一人として自転車道を走る人影を見ることはありませんでした。 なんとも寂しいかぎりです。 |
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「鹿本鉄道」廃線跡自転車散歩3(山本橋~肥後豊田 3.2km, 11'29") | ||||||||||||
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11分ほど走って 「肥後豊田停車場跡」 に到着。 列車は9分で (豊田→山本橋方向は11分) この区間を走破していたそうです。 昭和35(1960)年に鉄道が全線運休となり (廃線は5年後) 踏切で運行再開に備えて車に一時停止を求める鉄道側と踏切解消で一時停止を解除したい警察との間でつばぜり合いがあったとか。 |
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