亥年最後に猪肉を喰らう:天草上島一周1泊2日自転車行

2019/12/08(日)~12/09(月),今度は天草 「上島」 一周約100kmの自転車旅行リポートです。 
前回の 「島原半島+天草下島+長島縦断自転車行」 で少し自信がついたので,今度は1泊2日で天草上島を一周してみることにしました。 天草諸島は昭和41(1966)年に5つの橋で九州本渡と結ばれ,以来陸続きとなりました。 これまでに長崎県の五島をはじめ幾つかの離島を訪れたことがありますが,天候に左右されることもなくまた船への乗り換えなしで直通できることがどれだけ有り難いか天草を訪れる毎に痛感します。 100km程度なら日帰りも不可能ではないのですが,朝晩の冷え込みが増すこの時候万一風邪をひいて病院のお世話にでもなればインフルエンザを感染されたりして大変なことになるので (笑) 走る時間帯を昼間の暖かい時間帯に短縮,また投宿地 : 天草市 (旧・本渡市) での美味しい食事も楽しみに1泊で旅程を組んだ次第です。
天草諸島への入口は宇土半島西端の 「三角(みすみ)」 ですが,上島への入口となる 「松島」 までの五橋区間は橋の規格が古く歩行者や自転車の通行を考慮した歩道が貧弱で危険なため,自宅最寄り駅の植木から熊本駅までJR列車輪行 (280円),熊本駅前から五橋区間の終わる松島までを 快速バスあまくさ号バス輪行 (1,550円) としました。 あまくさ号は天草市本渡 (ほんど) まで行くので天草下島で自転車旅行をする時にも利用価値大です(熊本→本渡 : 2,340円)!今回も使用機材は 輪行 の容易な折り畳み自転車,車輪の直径が20インチと通常サイズの26インチ車に比べて25%程小さく,脚力が少しだけ余分に必要となりますが,運動量は増えるので良しとしました。 DAHON Mu N360 という 風変わりな無段階変速機付き 20インチ車輪の折り畳み自転車で走ります!
それでは行程をご紹介。
◆ 第1日 : 自宅~(自転車 : 3km)~自宅最寄りのJR鹿児島本線 「植木」 駅 = = (列車輪行) = = 「熊本」 駅
        熊本駅前2番バス乗場 (駅前道路対面 : 到着列車ホームから250m) = = (快速バスあまくさ号) = = 松島バス停
        上天草市松島~(自転車,天草 「上島」 南岸沿い国道266 : 60km)~天草市 (旧・本渡市)
        夕食@トラットリア・ヴィア・チェントロ (イタリア料理),旧・本渡市泊
        第1日自転車走行距離 : 63km
 ◆ 第2日 : 天草市街地探訪(自転車 : 4km)~昼食@蛇の目寿司
        天草市~(自転車,天草 「上島」 北岸沿い国道324 : 33km)~上天草市松島バス停
        松島バス停 = = (快速バスあまくさ号輪行) = = 熊本駅前1番バス乗場 (駅前道路駅舎側)
        熊本駅 (降車バス停から250m) = = (列車輪行) = = 「植木」 駅~(自転車 : 3km)~自宅
        第2日自転車走行距離 : 40km
12月の寒中サイクリングなんて大丈夫か?という声が聞こえてくるようですが,10℃程度の気温であれば大掛かりな防寒対策は不要であり,ペダルを漕いでいる限りは体温も上昇するので心配ありません。 オープンカーも8月の昼間は全く出番がなく冬場の方が快適に走行できるのとちょっと似ていて面白いですね! 前回 (10月末) より気温が8℃ほど下がりましたが日照時間中なら快適に走ることができました。 ちなみに今回の衣装は,上 : Tシャツ+トレーナー上着+マフラー+フード付フリース+フード付ウインドブレーカー+軍手 / 下 : ブリーフ++トレーナーパンツ+厚手靴下+スニーカー,というカジュアルなものです。 サイクリング・ウエアは色使いも派手で,なにより自転車を降りた時に周囲から浮きまくるのでキライ。(笑) 折畳みの街乗り自転車だしね! 気楽に行こう。
 ◆ 第1日リポート ◆
第1日朝,天草上島の入口 「松島」 を 10h00AM 迄には出発したいので,逆算してまだ日が昇らない暗い中 5h50 に自転車で自宅を出発。 最寄りのJR九州鹿児島本線 「植木」 駅までは平坦路と下り坂の 3km,もう少し温かい季節ならば楽勝なのですが如何せんこの日の最低気温は+2℃! フリースとウインドブレーカーのフードを上げヘッドライトをバンドで頭に固定しマスクを掛けてなんとか寒さに耐えながらペダルを漕ぎます。 駅前で自転車を折り畳み輪行袋に収納,所要時間10分。 前回輪行の教訓で少し大きめの輪行袋を新調 (1,699円),袋の取り出し/収納も楽でこのお値段! 消耗品と割り切れば品質も十分納得できます。 6h16 植木発,熊本着 6h29,日曜の早朝ということで車内はガラガラです。 ロングシート端部に席を取り輪行袋に収納した自転車が倒れないよう手で軽く支えます。定刻に熊本駅1番のりばに到着,目の前のエレベーターで改札の地上階に下降。 輪行袋ともで14kgの大荷物なので乗り換えには十分余裕を持たせた旅程が必要です。 トイレを済ませ,駅構内 (改札外) にある24時間営業のコンビニで朝食を調達,待合室のベンチに腰掛けてゆっくりともぐもぐ。 駅構内の飲食店はどこも朝7時からの営業開始,6時スタートだと利用客を独占できるのに…。
乗り継ぎのバス到着時刻 7h38AM に合わせ,信号待ち1回,250m先の 「2番バス停」 までのそのそ移動。 この日の日の出時刻は 7h07! 快晴の空に気分は高まります。 7h38 定刻に快速バスあまくさ号到着。 床下のトランクを開け自転車を積み込みます。 収納袋に入れた自転車は縦横高さ合計200cm以内,重量20kg以内に限りトランクに入れて携行できます。 全国的にみても自転車の輪行可能なバス路線は少ないので本当に有難いです ( 輪行可能な全国バス路線一覧はこちら )! 積み込み時に自転車がトランク内で倒れたり転がったりしないよう運転手さんの了解を得てワイヤー錠でトランク内部のフレームに固定します,所要時間1分,バスの運行ダイヤを乱さないよう手早く積み込みます。
快速バスあまくさ号のご案内
9h23 松島バス停に5分遅れで到着。 ここを輪行の始終点にしたのはここで3分間のトイレ休憩をするようバスの運行ダイヤが設定されているからです。 トランクに積み込んだ輪行袋入り自転車の積み込み/積み降ろしに少し手間取ったとしてもバスの出発時刻を遅れさせない細かな気遣いですが,全国的にみても希有な輪行許可バス路線 を維持するには自転車利用者にも相応の配慮が必要だと思います。

牟田トンネル松島バス停はバス会社の松島営業所 (ターミナル) のあった場所に建物を解いてコンビニを誘致,広い駐車場の一角をバス停として利用しています。 ここで自転車を組み立てて走り始めます。 トイレを済ませ飲料を購入,9h45 スタート! バス停を出てすぐの交差点を左折し天草 「上島」 の南岸を忠実にトレースする国道266号線でまずは姫戸町 (16.8km) を目指します。 松島~姫戸間はずっと不知火海沿いを走り,しかも坂道が限りなくゼロというお気楽サイクリングコース。 おまけに道路海側に幅1.5mの縁石で仕切られた歩道が殆ど全区間に亘って設けられ路面状態も良好で広くお薦めできます! 姫戸までの途中2つのトンネルがありますが,トンネル内も歩道は途切れることなく続き照明もあるので安心です。 もともと交通量の少ない道ですが,この日は日曜の午前中なので更に閑散としています。 途中漁港の防波堤に釣り人の姿がチラホラ見える程度の長閑な12月の風景が拡がります。 天草は釣り人に人気の釣りスポットですが,地元の方々も年齢を問わず暇な時には釣り糸を垂れていらっしゃいます。

姫戸には 「小島公園キャンプ場」 という沖の小島まで伸びる砂嘴を堤防で補強し,潮の干満の別なく歩いて渡れるようにした素敵な場所があり,島内には簡易な作りのバンガローがあります。 海は内海の不知火海で鏡のような水面が拡がりとても静かです。 正面にうっすらと見える山影は左側が八代市日奈久町,右が芦北町の辺りです。 不知火海は北の三角~松島で有明海に,南の牛深~長島~阿久根間で東シナ海とつながっているので湖ではありませんが,大きな湖のような趣がありますね。 右の写真は今回ではなく 2017/4/03 の昼過ぎに撮影したものです。
松島→姫戸の走行ルートはこちら (16.8km)
大道港で小休止姫戸町から同じ上天草市の龍ヶ岳町にかけては,歩道がこれまでの海側から山側に変わりますが,この日は交通量が少なかったのでたぶん大丈夫だろうと判断,歩道ではない海側の路側帯を走りました。 姫戸を出てすぐ少し上り坂がありますが標高差は20m程度で距離も短いので心配には及びません。 進行方向左手に見えてくる樋島 (ひのしま) を過ぎ上天草総合病院前のコンビニで昼食。 天草も高齢化が進み就労人口のなんと4割近くもが医療・介護事業に従事しているというデータもあるほどですが,これほど風光明媚で温暖な土地なら老後を移住して過ごすのも悪くないかもしれませんね…というのは他所者の身勝手な妄想です。 恐竜化石の出土で有名な御所浦島に向かう船の発着する港の一つ : 大道 (おおどう) 港で小休止。
姫戸→龍ヶ岳町大道港の走行ルートはこちら (8.8km)

ここから少しの間,国道266から離れ,海岸線に忠実に沿いながら大道の中心集落 (大道漁港) を彷徨うことにします。ここでこの日私は得難い経験をしました。 昼過ぎの大道漁港周辺をのんびり走っていると一隻の漁船が漁から戻ってきました。 そして防波堤から港内に入るや否や接岸前から拡声器でセールストークを始めたのです。 いわば漁場直送の移動販売!

「鮮魚のご案内です,キビナゴを持って参りました,ご入用の方は港までおいで下さい」

…とまあ手慣れた調子で流暢なアナウンス。 キビナゴは近海魚,不知火海をはじめ天草周辺でよく穫れますが鮮度落ちもはやく大衆魚ゆえ燃料費の高騰もあって原価スレスレでの販売を余儀なくされているのが実情です。 漁協を通さず直売すれば幾らかは高く売れるからこうした直売が始まったのでしょうが,注目すべきはその鮮度! 穫れてからまだ1時間も経っていない超新鮮なキビナゴはいったいどれだけ旨いのか、涎が出ます! 今度車で行く時にはクーラーボックス必須だな。

さて大道 (おおどう) の中心集落を過ぎ,ふたたび国道266と合流。 ここ龍ヶ岳町大道までが上天草市,そして西隣の天草市倉岳町に至るにはこれから 「望薩 (ぼうさつ) 峠」 を越えなければいけません。 標高80mとまあ大したことはないのですが,峠区間は道路改良の進む国道266号線にあって最後までセンターラインのない狭くて曲がりくねった道が約5kmに亘って続きます。 途中一部区間は今年10月はじめから全通に先行して部分供用が開始されましたが,旧道の頂上付近で新道と合流しているので道路改良は幅を広げカーブを緩やかにするのが目的で勾配が現状より緩くなることはなさそうです。 そりゃ車を優先した設計になるわよなぁ。 自転車にも優しい道路にするなら,峠なんて長大トンネルを掘るしかないから建設予算が幾らあっても足りんわ。(笑)
なお望薩峠の名前の由来ですが,おそらく峠の上から南方に薩摩の地を望めるから…とまあそんなところなのでしょうが,地図で確認すると南方には御所浦島があって薩摩の地は見えん! かわりに新道の開通区間から西方向,棚底湾越しに倉岳町棚底集落を撮ってみました。 内海の入江って本当に穏やかですねぇ!
大道港→大道漁港→望薩峠→倉岳町の走行ルートはこちら (17km)

目玉入口バス停望薩峠新道区間はあっと言う間に終わり旧道の曲がりくねった 迷い道をくねくね 進むと,前方になんとも奇妙な名前のバス停を発見!

「目玉入口」!!!

数年前に 「ナニコレ珍百景」 でも取り上げられたらしい。 ここから東に入った集落に大きな岩があって山の上から見下ろすとまるで目玉のように見えたことから目玉集落と呼ばれるようになり,その入口のバス停なので 「目玉入口」 ですか。

航空写真を見るとよくわかりますが,天草上島は山が海岸にまで迫り耕作に適した平地が殆どありません。 今回自転車で走った島内周回路である国道266 (南 : 不知火海側) と国道324 (北 : 有明海側) は海岸線沿いの区間が殆どで陸側はすぐに山の斜面が迫ってきます。 また島内にはドングリの木が多数自生しているのでこの季節には路面にドングリがたくさん落ちています。 歩道が道路の山側に設けられている区間では真上に生い茂る木からドングリが真下に落ちたり斜面をころころ転がって歩道に辿り着くので満遍なく歩道の路面にドングリの実が散らばっているのですが、歩道が山とは反対の海側に設けられている区間では歩道の縁石に沿ってドングリが一列に並ぶ光景を目にします。 そして歩道は建設費抑制のため縁石上縁まで歩道面を高めず車道路面と同じ高さで舗装され区切りとして縁石を設置,縁石側面には一定間隔で排水窓開け車道路面の水を歩道側に排水する仕掛けになっているため,この排水窓のところから車道側に落ちたドングリの実が排水と一緒に流れてくるためちょうど歩道を横断するように一定間隔でドングリの帯が並ぶことになるのです。 はじめはなぜドングリの帯が一定間隔で並んでいるのか不思議でしたが,なにせゆっくり走りますから縁石側面の排水窓との関係にすぐに気が付きました。 こんななんでもない発見もゆっくり走る自転車操業ならではの醍醐味なのかもしれませんね。
倉岳大えびす倉岳町でトイレ休憩の序でに 「倉岳大えびす」 なるものを訪ねました。 全高10m総大理石造りというバブリーな宣伝文句には全く心躍りませんが (笑) 大漁と海上安全の守護神であるえびす像は天草の各地で見かけます。 ここ倉岳港沖の不知火海は有名な鯛釣りスポットなので恵比寿様の霊験あらたかなのでしょう。

この大えびす像を訪れたのが午後2時半,一番気温が上がる頃合いです。 地元漁師のおじさん達が休日の午後,えびす像の前で楽しそうに乾杯していらっしゃいます。 私もキライな方ではないので仲間に加わりたい誘惑を必死に堪えて先を急ぎます。 本日の目的地,天草市中心街の宿まであと15km,イスカンダルよりはるかに近い! これから先はほとんどが平坦なルートなのが幸いです。 というか本日の走行ルート,さっき越えた望薩峠以外に坂道なんてないぞ!

倉岳町→栖本町→本渡瀬戸大橋→天草市中心街の走行ルートはこちら (15.5km)
栖本のコンビニで珈琲ブレイク。 山登りをする方は道中あちこちでコーヒーを沸かして休憩しますが,自転車乗りもちょっと走ってはコンビニで油を売ります。 60km走るのにいったい何時間かかるんだ?(笑) のんびり行き当たりばっ旅の本領発揮です。 
本渡瀬戸大橋天草上島と下島を隔てる本渡瀬戸は昔から開削と浚渫を繰り返しながら少しずつ大きな船が通過できるようになりました。 そのため古くは昇開橋が,現在はループ橋が船の通行を担保しています。 有明海沿いの国道324を補強する高規格道路が10年後に天草下島の旧・本渡市まで伸びた時には本渡瀬戸にも新しい橋が架かることでしょう。 ループ橋の勾配は変速機付または電動アシストがあれば自転車でもあまり無理をせずに登れる位の緩い坂になっています。 橋の歩道は南側に設けられています。

なおループ橋である本渡瀬戸大橋の南側に掛けられている歩行者用の昇開橋は 2020/1/中旬まで補修工事のため全面通行止になっています。 少し遠回りになりますが工事期間中はループ橋を利用しましょう。
橋を渡って天草下島に入ると上島の鄙びた風景と違って随分と 「都会」 の印象に変わります。 とはいえ旧・本渡市街地に限ったことなのですが。(笑) 今夜はその都会に宿を取り,美味しいイタリア料理で猪肉を堪能することにします。
トラットリア・ヴィア・チェントロ,市街地中心部の本渡バスセンターすぐ裏にあるビルの1階に店を構えるイタリア料理店でオーナーシェフの 酒井道夫さん は地元のご出身,天草でしか味わえない料理を堪能しました。

前菜に今年穫れた天草オリーブの塩漬,プリマは天草で捕獲された猪フィレ肉のペンネ (→),セコンドに天草豚バラ肉のカスーレ (豆煮込み,↓),飲み物は天草晩柑リモンチェロのソーダ割と本日のお薦めイタリア赤ワイン (グラス),舌代は消費税込で樋口一葉女史に小銭が少々,赤色料理ガイド本的に言うと星が付いてもいい感じです。 遠からず再訪したいと思いました。
昼間に60km走ったという言い訳も手伝いモリモリ平らげました。 ワインリストのスプマンテ (発泡) に,Blanquette de Limoux を見つけたので次は誰か誘って栓を抜こうか。

亥年も暮れの押し詰まった時期になってしまいましたが,念願の猪肉を喰らいお腹も心も大満足のうちに天草の夜は静かに更けてゆきました。 めでたし,目出度し!
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